登山者外来FOR CLIMBER
当院では2019年4月より「登山者検診」を開始しました。
全国的にもめずらしいこのような検診を開始した理由としては、山岳遭難の増加があります。
2018年には日本全国で山岳遭難者数は3129名と過去最多を記録しており、そのうち342名が帰らぬ人となりました。中でも長野県は遭難者数330名、死亡・行方不明数57名であり、山岳遭難した際の死亡・行方不明率は17.3%といずれも全国最多となっており、極めて高い数字です。
山岳遭難の主な原因として、道迷いや転倒・滑落がありますが、そのような山岳遭難の背景には疲労があると考えられます。
一方で、登山中の死亡事故の原因をご存じでしょうか?滑落などの外傷が多いのはもちろんですが、意外な理由として心臓突然死が山岳遭難死亡の約20%を占めているといわれています。
当院の登山者検診の目的は、
①運動耐容能(体力レベル)の客観的評価を行い、自身の体力に合った山行計画を立てていただくこと
②心臓病を事前に評価し、安全に登山を楽しんでいただくことです。
登山者外来
そのような中で、心臓病で通院中の方からも「登山に関する評価やアドバイスを受けたい」という要望を多数いただいております。
当然ながら、もともと心臓病をお持ちの方は、そうでない方に比べて心臓突然死のリスクは高く、運動耐容能(体力レベル)も低い事が多いです。
当院の循環器内科では、様々な心臓病によって慢性心不全と診断された方(その疑いのある方)への運動耐容能評価と運動療法(心臓リハビリテーション)を行う事での心臓病の再発・悪化予防を目的とした外来を行っております。ご希望の方には、その外来の中で山岳医である医師が安全な登山に関しての評価やアドバイスも行っており、登山者検診と区別するために「登山者外来」と表現してご案内しております。
心臓病をお持ちの方であっても運動が全てダメというわけではありません。むしろ、有酸素運動や下肢の筋力トレーニングをすることで、予後が改善することがわかっています。
登山は登り方を工夫することで、マラソンなどと比べると運動強度を低く抑えることもでき、かつ長時間楽しく有酸素運動ができます。さらに大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)を中心として下肢筋力の向上が期待できるため、登山を上手く活用することで心臓病があったとしても、より健康に生きられる可能性を秘めています。
かといってがむしゃらに登れば突然死のリスクが高くなりますので、適切にリスクを評価して、ご自身に見合ったスタイルを相談させていただければと考えております。心臓病を事前に評価し、必要に応じてきちんと治療しておく事も重要です。
また、心臓病と一口にいってもその内容は様々であり、たった1回の検査だけでリスク評価をする事は難しいため、過去の病歴が正確に分かるように、かかりつけの医師から診療情報提供書(紹介状)をいただいて、正確な病歴を把握した上で必要な検査や治療を決定します。
登山者検診 | 登山者外来 | |
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既往歴 | 心臓病の既往歴がない方 生活習慣病(高血圧・糖尿病など)の有無は関係ありません。 |
明らかな心臓病を有している方 例:ステント治療後・ペースメーカー植込後・心筋梗塞後 |
受診経路 | 健診課 0263-35-0479 |
地域医療福祉連携室 0263-35-6999 |
備考 | かかりつけ医の診療情報提供書をいただいています。 |
- 登山に関しての評価やアドバイスについて、特別な料金は頂いておりません。
- 全ての循環器内科医が対応できるわけではありませんので予約時にご相談ください。
- 明らかな心臓病はないものの「胸痛」や「動悸」など心臓病を疑う症状を認める場合もご相談ください。
- 既往歴や症状によっては登山者検診をご案内する場合もございます。
受診の流れ
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1
かかりつけ医に相談
まずはかかりつけ医にご相談下さい。
かかりつけ医から診療情報提供書(紹介状)を頂く必要があります。 -
2
当院地域医療連携室にお電話
当院地域医療連携室にお電話下さい。
電話:0263-35-6999
FAX:0263-35-5338
相談受付時間:月〜金 9:00 - 17:00 -
3
診療情報提供書をFAX・郵送
かかりつけ医から診療情報提供書をFAX・郵送していただきます。
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4
循環器内科担当医が必要な検査を判断
診療情報提供書の内容に基づいて当院循環器内科担当医が必要な検査を判断します。
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5
受診日の日程調整
当院からお電話で受診日の日程調整をさせていただきます。
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6
受診当日
受診当日は、1階の総合受付にお越し下さい。
医師紹介
市川 智英 (いちかわ ともひで)
所属学会・専門医資格
・日本循環器学会 (専門医)
・日本不整脈心電学会(専門医)
・日本内科学会(総合内科専門医)
・日本登山医学会 (国際認定山岳医)
・医学博士(藤田保健衛生大学)