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松本協立病院

社会医療法人 中信勤労者医療協会 松本協立病院
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歯周病DENTISTRY 2022年8月9日

お口の中で虫歯と同じ位かかりやすい病気で、歯槽膿漏ともいわれるものです。 歯周病はかかっていることに気付きにくく、糖尿病や、高血圧症などと同じ生活習慣病のひとつと言われ、10代からでもかかる病気です。そして気付いた時には歯を抜かなければならない、ということもあり、油断すると怖い病気です。

歯周病の原因

一番の原因は、歯の根元についた歯石の中にいる細菌です。この細菌は常にお口の中にいる細菌で、虫歯の原因となる細菌とは別の種類ですが、この細菌が歯についた汚れの中で巣をつくり、汚れを石灰化(硬く)させ歯石をつくり上げるようになります。そしてその歯石の中は、この細菌にとって居心地の良い環境となり、ムクムクと育ち、その数を増やしていきます。その時に出す毒素の影響により、歯の周りにある細胞組織を破壊し、炎症を起こします。

その他の原因としては、生活環境や個人の個体差(歯周病のなりやすさ)が挙げられます。生活環境とは食生活や生活のリズム、歯みがきの習慣とその仕方などです。

個体差とは、お口の中の細菌数や歯並び、唾液の性状、全身の健康状態などです。 いずれにせよ、これらのことは歯周病を悪化させる因子としてとらえられていますが、別の言い方をすれば細菌・生活習慣・個体差の悪い部分が重なったところで歯周病が発症すると言えます。

例えば、「歯をちゃんと磨いていたのに歯周病になってしまった」とか、「歯をあまり磨いていないけど歯周病はそんなに進んでいない」といった話をよく聞きますが、これは生活習慣や個体差が人それぞれ違うことが影響しているからです。

つまり、歯周病の一番の原因は細菌ですが、その発症の仕方には個人差があるとも言えるでしょう。

歯周病の進行とその症状

初期

歯肉(特に歯の周り)の色がうっすらと赤く、少し丸みを帯びていて腫れている状態を歯肉炎といい、小さいお子さんでもかかる病気ですが、痛みはほとんどなく、見た目も注意して見ないと分からないくらいです。たまに歯ブラシをすると出血するというのもこの時期のことが多いです。

初期~中期

歯肉が下がり、歯が伸びているように見えるようになると歯周炎と言われるものになります。この時期では歯肉だけでなく、歯を支える骨まで破壊され始めています。しかし痛みはほとんどなく、若干の違和感やむず痒い感じがある程度です。また、歯肉からの出血や膿がみられるようになります。それに伴って口臭も出てきます。

中期~重症期

この時期になると歯肉や骨の破壊はかなり進み、歯の揺れが自覚できるほどになります。そのため、物を強く噛めなかったり、噛むと痛みを感じたりします。また、膿が溜まると何もしていなくても強い痛みを感じるようにもなります。

このように、はっきりと自覚できる時には既に重症となっていることが多く治療も困難となります。

痛くなってからの治療では取り返しのつかないこともあるので、早めの定期受診が大切になります。

  • 歯肉炎歯肉炎
    歯槽骨は無事
  • 経度歯周炎経度歯周炎
    歯槽骨破壊が始まる
  • 中等度歯周炎中等度歯周炎
    歯根の半分まで
    歯槽骨が破壊
  • 重度歯周重度歯周炎
    歯根の半分以上
    歯槽骨が破壊

歯周病の予防と治療法

歯周病の予防と治療法

やはり一番重要になってくるのがその汚れをきれいにとっていくことです。日頃から歯ブラシで歯と歯肉の境目の部分の汚れをとることができればいいのですが、やはり長期的に汚れがついたままだと汚れが硬くなり歯ブラシではとれなくなってしまいます。そこで歯科では最初に“スケイラー”という機械や器具を使って硬くなってしまった汚れをとっていきます。最初にスケーリングという歯の表面の汚れ落としを行います。それだけでは改善されず、また歯と歯肉の間の溝が深かったり、歯の根っこの部分に汚れが付いていたりする場合は、いわゆる歯石取りという治療を進めていきます。

そうすることで歯の表面をきれいで滑沢にすることができ、また汚れが付きにくくなることでそれ以上の歯肉や歯へのダメージをおさえることができます。

それでも改善せず、歯と歯肉の間の溝が浅くならなかった場合は、外科処置を行い改善を図ります。外科処置には大きく分けて3種類あります。ここでは詳しくは述べませんが代表的なものには

  • 切除療法
  • 組織付着療法
  • 再生治療法

があります。

歯周病で一度破壊されて下がってしまった骨をもとに戻すのは困難です。そのため、毎日の適切な歯ブラシや早めの定期受診が大切になるので日頃から歯周病の予防を心掛けていきましょう。

治療後のメンテナンス

治療後、病状の安定が図られた後、再発や悪化が起こらないようその状態を良好に保つために、予防的に継続して行う(してもらう)ことを言いますが、大きく分けて3つの方法があります。基本的には歯周病の原因となるプラーク(細菌塊)の除去が目的となります。

自分で行うブラッシング

1つ目は、これが最も重要なのですが患者さんご自身のブラッシングなど(ホームケア)治療時に指導された方法で継続してプラークの除去・清掃を行うこと。

歯科医院でクリーニング

2つ目は、1ヶ月から2ヶ月間隔で歯科医院に来院してもらい、ご自身でブラッシングできない部位(場所)など を機械を使用して除去・クリーニングを継続して行っていく方法です。これには除去するということ以外に歯周病の原因菌(大まかに言うと嫌気性菌というのですがこの細菌の特徴は空気の中の酸素を嫌うことにありますので、歯周ポケット(前項までを参照)内は酸素に乏しいところなのでこの細菌は好んで存在しているわけです)に対して空気中の酸素を多量にこのポケットに送り込むことで死滅もしくは不活性化(細菌の活動を抑制すること)させる目的もあります。

1ヶ月もしくは2ヶ月に1回来院して、

  1. 普段のブラッシングの様子の確認(ホームケアの支援)
    これによって良好なブラッシングを継続して行えるようにします。
  2. 機械によるクリーニング
    機械による清掃、歯牙全体のブラシのとどきにくい部位(歯周ポケットの深い場所、歯根のくぼんだ場所やいりくんだ場所)のクリーニングを行います。 機械は虫歯を削って治療するときに使うものに形が似ていますが、先端にブラシやラバーチップを取り付けます。回転させて(電動歯ブラシではありません)プラーク・沈着物を取ると同時に歯の表面を磨き平らな面に仕上げプラークなど付着しにくいようにツルツルにします。実際にこのツルツルの状態にすると患者さんはとても気持ちよい感触のようです。最後にフッ素塗付して終わりです。フッ素を塗ることによって細菌の活動を抑制することができます。虫歯予防の効果もあります。 以上のことをまとめると「歯周病予防のために様々な機材を用いた専門家による歯(歯面)の清掃」といえます。

歯科医院で治療を繰り返す

3つ目は、3ヶ月から数ヶ月程度に毎回歯科を受診し、歯周病の治療を繰り返します。 基本的な治療(除石、清掃、ブラッシング指導など)のみで病状の安定を図れるという意味での定期的な治療(メンテナンス)と言えます。

どのようなメンテナンスの方法であっても歯科医院と疎遠にならず定期的に来院することが、口の中の健康を保つ上で一番必要なことです。

最も重要なのはホームケアです。これがなければほかの方法だけでは歯周病のメンテナンスは成り立ちません。

これからの歯科のかかり方

「定期的に歯石除去や歯面清掃を受けている者」の割合を2010年に30%以上に

厚生労働省健康日本21より

現在50歳以上の国民は10年間に平均5.4本の歯を失っているが、定期管理を受けている人たちでは、0.7本。

痛くなってからお金をかけて頻繁に通うか、気持ち良く年に2~3度通うか。

2~3ヶ月に1度、美容院に行くように健康管理のために通うのがこれからの歯科のかかり方

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